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1984    三重県生まれ

2018    石川県立九谷焼技術研修所 実習科 加飾専攻 修了

    一級陶磁器製造技能士(上絵付け作業)資格取得(所轄・主催;厚生労働省)

2019    金沢美術工芸大学 大学院美術工芸研究科 博士後期課程 学位取得(芸術)

展覧会

2009   「現代工芸への視点-装飾の力」<東京国立近代美術館工芸館/東京>

2014   「現代・陶芸現象」<茨城県陶芸美術館/茨城>

2016   「焼締—土の変容」<海外巡回展(2016/4/19〜現在)、主催;国際交流基金>

2020   「和巧絶佳展 令和の超工芸」<パナソニック汐留美術館/東京ほか巡回>

2022   「北陸工芸の祭典 GO FOR KOGEI」<那谷寺/石川>

2023   「第17回パラミタ陶芸大賞展」<パラミタミュージアム/三重>

工芸論の動態vol.2-1_20231103-1224
工芸論2023_DM3

本展にあたり、これまで私が取り組んできた「いきもの」らしさを起点とする一連の制作プロセスから導き出された工芸に対する現在の考えを説明したい。

私はあらゆる変化あるもの・ことを「いきもの」と捉え、考えや素材に対して多角的にアプローチすることは私自身と作品をより深めていくものと考える。その一つとして設定したテーマが器物である。器物は、あるものとあるものとの関係において規定されると考える。そしていつかにこの考えをベースに作り出した作品たちを俯瞰してみることによって、次の新たなテーマ(課題)が明らかになると考えた。本作「祈り」は以上のような背景から生まれ、祈りについて考えることは図らずも工芸をとらえていくための重要なきっかけとなった。まずは本作のタイトルについての思考を説明し、その後工芸に対する考え方を述べる。

「祈り」と「願い」の違いをどうとらえるかはとても難しい。辞書的な定義や語源は説明されてはいるが、各人に思い浮かぶことが必ずしもぴったりと当てはまるものではない。無宗教だという人が祈ることもあるし、「〜を願う」という祈り方もある。思いがどういった性質のものであるかは、文化や信仰する対象の有無、またその度合い、時代の感覚や風習、そして個人の価値観などによっても変化し得る。こうした複数の要素から受ける影響によって語彙のニュアンスに違いが出るような場合、その対象のもつ意味を特性論的*に捉えていく方法がある。例えば自分の思うことを届けたい対象の有無、それが存在する場合はどのような存在であるか。あるいはどの程度利己的で利他的か、時間的な持続性などである。そういった考察からみえてきた性質から、最終的にどう位置づけるかも個人に委ねられる。このように、個々が内包する意味要素の有無や多寡で再構成する視点が特性論的アプローチである。

この考え方は昨今議論されている美術か工芸かといった位置づけの問題にも適用可能な方法論であると思われる。なぜならば、個々の作家や作品、あるいは団体や制作のプロセスといったケースは非常に多様だからである。こうした場合、必ずしもいずれかに振り分けるのではなく、双方を重ね合わせて捉えていくことが必要であろう。素材や手法、展示方法やシーンやコンセプトなど、あらゆる要素や属性が存在する中で、それらのどの特性をどの程度有しているかによって作家や作品の性質を比較的正確に理解することができる。このような方法によってさまざまな表現者・表現物を内包することで美術や工芸の領域は未だかつてないほどに広がるが、将来的にはそれらを眺めることによって、より客観的な価値観によって工芸の枠組みが明らかになると考える。

*特性論は、個性を記述する際に関係すると考えられる特性(trait)を挙げ、個々のケースがそれらの特性をどの程度有しているか、あるいは関連があるかによって記述を行うものである。たとえばBig-5とよばれる性格理論は、人間の性格特性として開放性・外向性・協調性などの5つを挙げ、個人がこれらの特性をどの程度有しているかによって個性の記述を行う。

佐合 道子

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